2022年5月に国土交通省が自動車整備士の制度の見直しを正式に決定しました。今回の制度改正による変更点は多く、2級整備士の資格は種類こそ総合と二輪の2つに再編されますが、一般的な自動車整備工場で仕事をするために必要な総合2級整備士の資格は、現在の制度における2級整備士の資格保有者より多くの知識や技能を求められることになります。この見直しが実施されたのは、簡潔に述べれば自動車整備業界を取り巻く状況の変化が大きな理由です。ここ数年、自動車整備事業に従事する人の数は50万人台半ば、整備要員に限定しても40万人前後で推移しています。

その一方で、整備要員の有効求人倍率はどんどん上昇しており、2020年は全職種平均の有効求人倍率が1.01だったのに対し、自動車整備要員は4.50と非常に高い倍率を記録しました。これは求職者側にとっては非常に採用されやすい状況といえますが、事業主側からみると積極的に求人を行っているものの、なかなか人が集まらない状況にあることを意味します。また、養成施設の種類の一つである自動車整備学校の入学者もピーク時の半数まで減少しています。国土交通省は少子化や職業選択の多様化を主な要因として挙げていますが、仕事内容の大変さや専門職でありながらの給与水準の低さ、近年生産されている車両の整備を行うために必要な先進技術の習得の難しさなど、要因は他にもたくさんあります。

自動車整備業界では自主的にイメージ向上のアピールを行って、多くの人材を獲得しようとしていますが、あまり成果に結びついていないのが現状です。このような状況から自動車整備士の人材確保を制度面でも後押ししようという動きが出て、国土交通省内での検討の結果、2022年の制度改正に至りました。新制度は、2027年1月1日から実施される予定になっています。